左官のプロ 外壁工事のプロが「そとん壁」について解説。
自然素材の需要の高まりから、近年注目が高まっているそとん壁について今回は言及していきます。
色選びやデザインだけでなく、補修やメンテナンスの観点でもプロが分かりやすく解説しています。
自然素材だから汚れが目立つ?価格と壁性能は比例するのか?20年後に後悔しない外壁選びのヒントをこのページではお伝えしています。きれいに外壁を納めるノウハウを知れば、理想の住宅のづくりに役立つ情報となるでしょう。
そとん壁の歴史、色選び、デザイン(パターン)について左官のプロが解説。
外壁を「そとん壁」にしようかと考えていて、色々調べているの。谷澤さんそとん壁について教えて。
25年くらい前かな、初めて見た時は衝撃を受けた。何というか目新し材料でとても斬新だった。でも当初は工事できる人がいなくて、メーカーが講習会を熱心に開催していた印象がある
比較的新しい壁材なのね。
今は割れ難くなったのね。
塗り壁だから「クラックは宿命的な関係」とメーカーも言っているけれど、素材の改良、工法の改良、職人の技術の向上を謳っている。とても熱心で好感の持てるメーカーという印象だね。
トラブルにも真摯に向き合ってきたのかな。
しっかりと工法が確立したし、下塗り材も仕上げ材もだいぶ良くなった。
デザインはどんなものが選べるの?
どれが人気のパターンなの?
人気なのは、かき落としとスチロール鏝の仕上げかな。スチロール鏝の場合は抑えて終了でなく、職人の技量やセンスで壁の印象もかなり変わる。一条とか三条とかさざ波は技量の差が出にくい印象。
他にはどんな点に気を付けているの?
かき落としの場合は、出角をどう上手く処理していくか、とても気を使うよ。どう納めるかをいつも考えている。
かき落としは難しいのね。
色味が写らないようにコーナー定木も着色したり工夫したりしている。それから塗り圧が薄くなり過ぎないように かき落とし の具合も調整しながらきれいなラインになる様に注意している。
角の部分は要注意ね。
仕上がりに関してはトラブルになりやすいので、冒頭にも言ったように、綿密な打ち合わせする事とカタログなどの仕様を良く読み込むことかな。
資料を熟読するわ。
あとは施工する時期によって色味が変わりやすいという点も注意が必要。これはそとん壁に限らず 漆喰 全般に起きる事だけれど白華現象が起きる場合がある、工事の際の気象条件などで白く浮き出て色ムラになる事があるんだ。だから 白華 によるムラが気になるという人は濃い色は避けて、淡い色合いにした方が良いだろう。
そうなのね、事前に確認しておく必要があるわね。
でも、壁材としては高性能な高級品。自然素材で、調湿性と防水性もある。断熱効果も高く、ほぼメンテナンスフリー。
高品質な壁材なのね。
質実剛健なイメージかな、意匠(デザイン) は一般的なものが多い。渦巻きというパターンがあるけれど、それ以外は面白いデザインに仕上げるのはやや難しいから、色やパターンには拘りないけど、品質にこだわりたいという人には良いと思うよ。
カラーは薄い方がおすすめでしたね。
それこそ昔は施工仕様を守らない建設屋には、とメーカーが出荷しない何て事もあったみたい(笑)今はそんな事ないだろうけどね。それぐらい拘りのあるメーカーの商品かな。
ありがとう、そとん壁の品質とカラーやパターンについて良く分かったわ。
そとん壁外壁の色やパターンのポイント
・そとん壁は比較的新しい壁素材。
・クラックが宿命だったがメーカーの努力で徐々に改善されてきた。
・パターンは主に6種類。
・自然素材なので白華が出る場合がある。
・調湿性、防水性、断熱性がある外壁。
そとん壁で綺麗な外壁を実現するには?施工の観点から左官のプロが解説
そとん壁の仕上げパターンに詳しくなったわ。
そとん壁は防水性もあるよ、メーカーは2層構造の効果だと言っているね、細かい粒子の下地と大きな粒子仕上げという構造だから、下地に浸水せず雨水が下に流れていくと言われている。
そとん壁ではどんな仕上げが多いの?
「かき落とし」と「スチロール鏝仕上げ」が多いかな。
工事を依頼する際にはどんなポイントを気を付けたら良いの?
雨仕舞いというけれど、掃き出し窓の下とかはどうしても割れる、上から伏せるメッシュを2重にしたりもするけれど、できれば板金とか他の素材を間に入れた方が良い。
他にはどんな工夫をしているの?
下塗りの段階でコーキングして、上塗りでもコーキングする。
開口部が肝心ね。
まとめると
1.ラスの段階でフェルト防水+防水テープ
2.下塗りで隠しコーキング
3.上塗りでコーキングする
と何重にも防水する事かな。
他に気を付けた方が良い事はある?
出隅 の処理かな、コーナー定木を使っても良いとメーカーは言っているけれど、定木の色が基本は白かグレーだから、仕上げる色によって定木が透けて見えてしまう。だから僕の場合はコーナー定木を使わずになるべく通常の木の定木を使うようにしている。
大変そうね。
工程数が増える、対面で塗っていかないといけないので、とても手間が掛かるけれど綺麗に仕上がるよ。
納まりの良い外壁を作るのは難しそう。
日の当たり加減はいつも意識しているよ、日当たりで乾き具合、仕上がりが全然変わってくる。夏は乾きが早いので人数を掛けないといけない、南側で日当たりが良いと、上から塗って行って下に到達する前にもう掻き始めないといけない。反対に真冬は乾き辛いので朝一番で塗っても乾きが遅くて、掻き始めるタイミングが日没前後だったりする。
スピードと予測が大切ね。
それから、かき落としの後の掃除かな、かき落とした材料が沢山下に落ちる。だから事前にブルーシートを敷いておく。これが結構大変で最後に土嚢袋に詰めて帰る。
稲熊さんはそとん壁は好き?
他の材料にない質感が良いよね。機能性が話題になるけれど、実は意匠性も高いと思ってる。意匠(デザイン)については用語集で確認してみてね。
お薦めのポイントは?
パッと見て自然素材と分かる風合い、インパクトのある外壁ならそとん壁がおすすめだね。
ありがとう、工事を依頼する場合の注意点が分かったわ。
そとん壁外壁の施工の観点からのポイント
・そとん壁には防水性がある。
・かき落としとスチロール鏝仕上げが人気。
・雨の当たる部分は板金などの素材を使用する。
・開口部にはコーキング処理をする。
・コーナー定木の部分は工夫が必要。
そとん壁はセルフメンテナンス可能?外壁を綺麗に保つコツを左官のプロが解説
そとん壁の施工について知れたわ。
「そとん壁」は設計士から結構依頼がある。お客さんがそとん壁の情報を見て、一軒丸ごとやりたい!みたいなケースも多いし、玄関だけとか、中庭だけとか部分的に使う場合と半々かな。
設計士からもユーザーからも人気があるのね。
意匠的というか風合いが良いよね、板金やサイディングは工期が短いメリットはあるけれど、やはり塗り壁の意匠性は高い。それと塗り物は自然素材なので、他の壁材と比べて経年の汚れが目立つけど、少しメンテナンスすればきれいになるし長持ちする。
そとん壁はボロボロ崩れるの?ネットでそういう記事を見たわ。
壁がボロボロ落ちてくるというケースは、これはそとん壁に限らず塗り壁全般の話になるけど、昔の素材は土とか泥の成分が多かったから表面がはがれてくる事があったが今は殆どない。それと表面の塵は、仕上げの段階でブラシで払うのでめったに起きないよ
何か対策はあるの?ボロボロ外壁が落ちてきたら後悔するかも。
コーティングするかも考えてみるわ。
ちなみに スチロール鏝 仕上げだと、経年で汚れても高圧洗浄機でかなりキレイになる。カビや藻も綺麗に落ちると言われているよ。圧力が高すぎると外壁を痛める場合があるから注意が必要だけどね。
そうなんですね。
今は波ラスで下塗りをする、その上から上塗り材を塗るので不具合は殆ど心配ない。どちらかというと上塗り材よりも、下地がどれだけしっかりしているかの方が重要かな。これもそとん壁に限らず塗り壁全般に言える事だけど。
塗り壁は下地作りが重要なのね。ちなみに田口さんのそとん壁のおすすめポイントはどんな点ですか?
風合いがとても柔らかい外壁になるよ、そとん壁を使えば、風情のある住宅の外眼が演出できるね。あとは耐久性、対候性、メンテナンスの観点で他の素材と価格も含めて比較して決めると良いかな。
どの外壁素材を使うかって、とても迷うわね。
塗り壁は手仕事だから、そとん壁のような自然素材の価値と併せて、技術の価値が伝わっていく事は良い事だと思う。
白洲(シラス)という昔ながらの素材に、時代を超えた価値があるのかも。
そとん壁外壁の汚れたコート材のポイント
・そとん壁は設計士からも人気。
・そとん壁は自然素材の良さがある。
・ボロボロ落ちる事は殆どない。
・コーテイング材、仕上げ材で強度が保てるようになった。
・汚れが気になったら、高圧洗浄を弱めに掛けると良い。
そとん壁の汚れや剥がれ、補修やセルフメンテナンスの方法は?左官のプロが解説
そとん壁の補修について教えて。間宮さんと生田さんはそとん壁の工事は多い?
うちは結構やっている方かな。
ウチはたまに位かな。
補修で気を付けているのはどんな事。
かき落とし だと冬場の工事の場合は気温、湿度、天候などで 白華 がでるからね。自然素材だから気温は要注意。
対策は何かあるの?
サンポールなど酸性の液体をかけてムラを丁寧に落としていく。
確かに色ムラがあると気になるかも。
乾く途中で雨や霧などで水分が当たったり、とにかく寒い時期には起こりやすいから注意が必要だね。
補修だと色合わせも大変そう。
昔、モルタル 下地からの補修で白華が起きた記憶がある、気温の要素が大きいので補修は季節を選んだ方が良いね。
冬場は避けた方が良さそうね。
専用の白華防止剤も出ているね。割と価格は高めだけれど。
濃い色の外壁で寒い時期の工事は白華防止剤も検討してみた方が良さそう。
それから タイル 周囲の取り合いでも白華がでる場合がある。
他には白華を抑える方法があるの?
冬場は乾燥が遅いからね、乾燥の促進剤などを加えると押させられるかも知れない。
乾きのスピードが重要なのね。
あと角の部分を強くぶつけたりすると、壁材が剥がれて定木が見えてきてしまう場合がある、これはそとん壁に限らず大きな骨材の外壁の宿命かな。だからそんな時は、壁の補修の前に定木も同系色で塗ると綺麗に補修できる。
定木は白かグレーだったわね。それ以外の時はそんな工夫をしているのね。
樹脂でなく無機質の自然素材なのでパターンによっては、濃い色だとムラがでる場合があるので、打合せはしっかりした方が良い。
濃い色の外壁の場合はしっかり打合せするわ。
それから薄い色だと、どうしても経年劣化で汚れが気になる場合があるけど、洗浄や塗り直しで綺麗にできる。
ボロボロ落ちるというネット記事もあったわ。
ボロボロといっても外壁の仕上げが自体 かき落とし だと、施工直後だと掻いた部分が表面に付着している場合がある。自然に雨風で落ちるのでまったく問題はないよ。最初は柔らかくて徐々に硬化してくる。自然素材の塗り壁の特徴だね。
そとん壁の補修について良く分かったわ。
そとん壁を使うと重厚感のある外壁になる。好きな方には堪らない映える外観の住宅になるね。
そうなんだ。
外壁だけでなく、内装材に使っても面白い素材だよ。
ありがとう、また教えてね。
そとん壁外壁の補修や色ムラ対策のポイント
・そとん壁など自然素材の補修は白華に注意。
・白華は寒い時期に発生する事が多い。
・白華は酸性の液体でムラを調整できる。
・白華防止剤も販売されている。
・濃い色と薄い色のメリット、デメリットがある。